「うちの子読書嫌いで、全然本を読まないです」
「どうしたら本を読むようになりますか?」
小学校の担任をしていたころ、こんな相談をたくさん受けました。
私は、担任していた教室には常に絵本や児童書を30~50冊置いていました。
そんな私が読書嫌いの子どもたちにどのように声をかけていたのか。
子どもたちはどんな変化を見せてくれたのか。
私が子どもたちにどのように関わってきたのかをお話します。
お子さんの読書嫌いで悩まれている方に、少しでも参考になれば嬉しいです。
・子どもが読書嫌いで悩んでいる
・どうすれば子どもがすすんで本を読むようになるのか知りたい
なぜ読書が必要なのか
文部科学省「子どもの読書活動推進ホームページ」には、次のように記されています。
読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものです。
文部科学省 子どもの読書活動推進ホームページより引用
文部科学省では、「子どもたちに欠くことのできないもの」であると同時に、子どもたちの読書離れが現代の課題であるとされています。
近年、スマホやタブレットが発達し、YouTubeなどの動画配信サービスが普及し、子どもたちの読書離れが進んでいます。
「別に読書しなくてもいいんじゃない?」という方もたくさんおられるのではないでしょうか?
しかし、読書することで子どもたちが様々な面において成長することが期待できます。
ここでは、先ほど紹介した文部科学省の文言を参考に、読書がもたらす3つの効果を紹介します。
効果①集中力が高まる
本の世界に入り込めると、「この先が気になる」「もっと読みたい」と、読書意欲がわくとともに、集中力も増します。
ただし、読書嫌いな子には、時間設定をしてあげてください。
それも、10分間など、短い時間から始めてあげましょう。
最初から30分や1時間といった長い時間を設定してしまうと、集中力がつくどころか、飽きて嫌になってしまうかもしれません。
必ず短い時間から始めて、お子さん本人が「もっと読みたい」と言うようになったら、少しずつ時間を伸ばしていきましょう。
もし可能ならば、おうちの方も隣に座って読書してみてください。
一人ではソワソワしてしまう子も、誰かと一緒なら集中して頑張れるということが多いです。
効果②落ち着きが増す
小学校によっては、朝の読書タイムが設けられている学校があります。
私も読書タイムが設定されている学校にいたことがありますが、読書から始まる一日は、子どもたちがとても穏やかに、落ち着いてスタートできました。
そしてそれは、どこの学校でも、どの学年でも、同じでした。
読書していると本に集中できるので、心が落ち着くのではないかと思います。
ただし、本を読むときは、静かに読めるように環境づくりに配慮してあげる必要があります。
効果③文章の理解力が高まる
「文章を読んでもどういう意味か分からない」
この躓きは、「教科書が読めない・理解できない」「ドリルやテストの問題の意味が分からない」など、たくさんの教科に関わってきます。
しかし、日頃から本を読んでいれば、自然と文章の理解力が高まることが期待できます。
ただし、流し読み(ただ文字を追うだけで、お話の内容は頭に入っていない)だと文章理解の点では効果が薄れてしまうかもしれません。
お話に興味をもち、その世界に入り込み、主人公や物語の動きについてじっくり考えながら読む習慣がついていると、より理解力が高まりやすいです。
読書嫌いが本を手にするまで 実践した5つの方法
では、ここからは実際に私が読書嫌いの子どもたちと関わってきた方法についてお話します。
何か一つでも参考になれば嬉しいです。
教科書に載っているお話から
教科書で学んだお話は子どもたちの印象に残りやすいです。
実際、大人のみなさんも、『ごんぎつね』や『スイミー』など、「子どもの頃に学校で習った物語は今でも覚えている」という方が多いのではないでしょうか?
そこで、まずは教科書に載っているお話に注目してみましょう。
お子さんが気に入ったお話があれば、チャンスです!
そのお話の作者の他のお話を勧めてみましょう。
例えば、『スイミー』が気に入ったお子さんなら、作者のレオ=レオニの作品を勧めてみる、ということです。
それ以外にも、同じようなジャンル(乗り物、動物、世界、スポーツなど)のお話を勧めてみるのもOKです。
ちなみに、これは「並行読書」と言って、学校現場でも取り入れられている手法です。
並行読書についてはこちらの記事でも紹介していますので、よければ参考にしてください。
学年相当よりやや幼い本から入る
「高学年だから高学年らしい本を読まないといけない」と思いがちな子どもが多いです。
そして、保護者さんの中にもこのように思い込んでいる方が多いです。
もちろん、学年・年齢相当の本を読むのが理想的ではあります。
でも、そこに執着して子どもが本を手に取らなければ、何の意味もありません。
まずは子どもが自ら本を選び、手に取り、読むことを目指します。
そのために、学年・年齢相当よりもやや幼い本から入ってみましょう。
・絵がたくさんあるもの、絵本
・字が大きめのもの
・ページ数が少ないもの
・クイズや迷路などのお楽しみ要素があるもの
・お子さんが好きなテーマの図鑑
このように、お子さんの年齢にしては少し幼いかな…という本からオススメしてみましょう。
ちなみに、これは私が担任をしていたときにも実践していたことです。
図書館から本を借りてくるときに、学年相当よりもやや幼い本を必ず何冊か入れるようにしていました。
こうすることで、読書嫌いの子も本棚に興味が向くようになり、自分で本を選んで取るようになりました。
「やや幼い」というところがポイント!
あまりにも幼いものだと「幼稚すぎる」と却下されてしまうかもしれません…
興味をもちやすい本から入る
読書嫌いの子たちは、
「読書 = 文学・読み物 = 文字がたくさん」
というイメージをもっている子が多いです。
そのイメージから、「活字を読むのが嫌」と、読書から遠ざかってしまいます。
なので、読書のイメージをガラッと変えてあげましょう。
本であれば、どんなジャンルでもOK!
お子さんの興味のあるジャンルの本から手に取ってみましょう。
文学だけでなく、スポーツ、イラスト、料理、動物、昆虫…何でもOKです。
もちろん絵本でもOK!
まずは「自分で本を選ぶ」「自分から本を手に取る」「本を読む」を目指しましょう。
では、私が実際に子どもたちと関わった例を紹介します。
例えば、サッカーが好きな子(中学年)。
私はまずはこんなタイプの本からオススメしました。
サッカーのテクニック等の解説本です。
これなら写真や図解がたくさんあるので、活字を読むのに抵抗がある子も受け入れやすいです。
子どもは「え?これでいいの?」という反応を見せますが、「これも立派な本なのでOK!」と言うと喜んでいました。
そして、朝の読書タイムになると、自分からこの本を手に取るようになりました。
このように、まずは本の中身(文字量、読み物、など)は気にせず、「自分から本を手に取る」「椅子に座って本を読む」という経験を積みます。
何冊かこういった本をオススメして、本を読むことに慣れてきたら、少しずつ文字数やページ数を増やしてみましょう。
サッカーを通じて世界へと視野を広げてみたり。
日本代表など、有名なサッカー選手の伝記を読んでみたり。
…と、このような流れで本をオススメしていました。
これを続けていると、担任していた読書嫌いだった子は、その後伝記を読めるようになりました。
「夏休みの間に自分で伝記を選び、読破した」と、保護者さんから喜びの声をいただきました。
子どもにとっても「できること」が増えるのは嬉しいですよね。
このように、まずは子どもが興味のあるジャンルから始めてみましょう。
※ここで紹介した本は、担任当時、実際に子どもが読んだ本とは異なります。「こんなタイプの本」と受け止めていただけると幸いです。
かんたん紹介してからオススメする
「保護者さんが図書館や本屋で本を選び、お子さんに渡す」ということもありますよね。
私が学級に図書館の本を置いていたのも、同じことです。
実は、私は途中から、本を置く前に「あること」をするように変えました。
そうすることによって、読書嫌いの子が自然と本棚に向かうようになったのです。
その、「あること」とは…
本の内容をかんたん紹介してから本棚に置く
このひと手間を加えただけで、子どもたちの食いつきはガラッと変わりました。
お子さんに本を渡すときに、「これ、読んでみて」「お母さん・お父さんのおすすめ」「おもしろいから」など声をかける方はたくさんおられると思います。
でも、それだけでは子どもたちは本のイメージがわきません。
そこで、ちょっと本の内容を話してから渡してみてください。
私のブログ記事で紹介しているようなかんたん紹介でOKです。
「仕事も家事も育児もあるのに、本を読む暇なんてない」という方もおられますよね。
そんなときは、絵本ナビのサイトを参考にしてみてください。
本のかんたんな紹介が書かれているので、そのままお子さんに伝えれば十分です。
中には読者レビューが書かれているものもあるので、こちらも参考にしてみてくださいね。
毎日少しずつ読み聞かせする(児童書)
これも私が中学年を担任したときに実践した方法で、とても効果的だったものです。
活字を読むのに抵抗がある子って、自分ではなかなか読めないですよね。
そこで、私は毎朝、児童書の読み聞かせをしました。
ただ聞くだけではイメージがわきにくい子もいるので、挿絵は必ず見せるようにしていました。
おうちで読むなら一緒に本を開きながら読むのが良いと思います。
当時読んでいた本は、こちらです。
一章が長すぎず短すぎず、手ごろな長さなのがオススメポイントです。
章にもよりますが、大半の章が一つあたり5~10分ほどで読めます。
なので、子どもたちも飽きることなく聞いてくれました。
「え!え!どうなるの⁉」…というところで毎回お話が途切れるので、早く次のお話が聞きたくなっちゃうんです。
全て読み終えたあと、学級の本棚に置いたのですが、取り合いになったほど大人気でした。
この本はシリーズ化していて、第2弾以降も子どもたちに人気でした。
読書嫌いの子もこのお話はおもしろかったようで、夏休みの読書感想文に第2弾を読んだ子もいました。
「1人で読みなさい」では続かない。
そんな方にぜひ試していただきたい一冊です。
ちなみに、高学年ならこちらの本がオススメです。
まとめ
読書嫌いが本を手にするまでのプロセスを紹介しました。
今回紹介したのは、あくまでも私が実践してきた方法です。
子どもたちには、一人ひとり個性や性格があります。
なので、「この方法で必ず読めるようになる」ということはないです。
お子さんの好みや性格、生活環境によって、本への興味のもち方は変わってきます。
一つの方法でうまくいかなくても大丈夫。
手に取ってもすぐ飽きて読まなくなっても大丈夫。
諦めずに、別の方法でトライしてみましょう。
ただし、読ませたい思いが強くなりすぎて、強制にならないように注意してください。
「自分が苦手なことなのに、無理矢理させられる」と感じてしまうと、拒否反応が強くなってしまう可能性があります。
お子さんが自分から手にできるように、お子さんの気持ちに寄り添ってあげてくださいね。
子どもたちが一冊でも多く、すてきな本と出会えますように。
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