「こんなことが起きたら嬉しいなぁ」と、想像をふくらませるのが楽しい絵本。
しかし、中には実在する人物をもとにして描かれた絵本もたくさんあります。
この記事では、実話をもとにした絵本を紹介します。
どの絵本の主人公も、実在する人々です。
あなたの知っている人物も絵本に出てくるかも…!
このブログでは、元小学校教諭の私が考えた「本を読んだ後にこんなお話をしてみては?」という提案をお話のタネとして紹介しています。
お話のタネが芽を出して、親子の会話の花がたくさん咲きますように!
・実話をもとにつくられた絵本を探している
・”女の子らしい”という常識に立ち向かった女性について知りたい
・私たちの身近なものを発明した人物について知りたい
絵本紹介&お話のタネ
どうして私の名前は「しげる」なの? 『しげちゃん』
小学校の入学式の日。
ウキウキして教室に入ったしげちゃんでしたが、早々に嫌な出来事が起こってしまいます。
それは、机の上に貼られた名前の紙。
男の子は水色、女の子はピンク色の紙で書かれていましたが、しげちゃんの紙は水色だったのです。
どうやら「しげる」という名前が男の子みたいだったから、先生が間違えてしまったようです。
実は、しげちゃんはこれまでにも「しげる」という名前のせいで、いやな目にあったことが何度かあったのです。
これは、女優・室井滋さんの実体験をもとにつくられた絵本です。
名前を見て男の子に間違えられ、これからの小学校生活が不安でたまらなくなったしげちゃん。
お母さんに”名前をかえてほしい”とお願いするのですが…
お話のタネ
この絵本のあとがきには、室井滋さんの思いが書かれています。
そこには、「芸名を決めるとき、いろいろ候補は考えたものの、やっぱり“しげる”以外の名前は自分には似合わないと気づいた」と書かれていました。
このあとがきの中で、室井さんは「結局、両親にもらった名前が一番好きになっていた」とも語られています。
そこで、こんなお話のタネ。
絵本をきっかけに、お子さんの名前にこめた思いや願いを話そう
名前をつけたときの家族の反応など、当時のエピソードをあわせて話すのもいいですね。
きっとお子さんもしげちゃんのように、「自分の名前が一番好き」と言ってくれますよ。
女の子らしい服装って? 『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』
この絵本は、1832年にニューヨーク州で生まれた、メアリー・エドワーズ・ウォーカーの幼い日を描いたものです。
メアリーが幼いころ、女の子はズボンをはいてはいけないという風習がありました。
女の子が着ることができたのは、きゅうくつなドレスだけ。
重いし、暑いし、動きにくいし…
でも、それがおかしなことだとは、誰も言いませんでした。
「そんなことはおかしい」と考えたメアリーは、誰もが驚くようなことをします。
それは、ズボンをはくことでした。
「これはすばらしいアイデアだ!」と喜んだメアリーは、ズボンをはいた姿をみんなに見せに行きます。
しかし、賛同してくれる人は一人もいませんでした。
どうしてみんなズボンをはくことに文句を言うのかわからないメアリー。
「わたしはやっぱりドレスを着た方がいいの?」とお父さんにたずねるのですが…
もし、あなたがメアリーさんのお父さんの立場だったら。
「ドレスを着た方がいいの?」と聞かれたら、何と答えますか?
お話のタネ
あとがきによると、大人になったメアリーは、ズボンをはいていることを理由に何度も逮捕されました。
でも、そのたびに「私は男性の服を着ているのではありません。私は私の服を着ているのです。」と話していたそうです。
ここで、お話のタネ。
”常識”とは何か?
”男の子らしい”、”女の子らしい”とは何か?
「おかしい」と感じたときに立ち向かっていくことはできるか?
絵本を読んで考えたことや、日ごろから考えていることを話し合おう。
こういったテーマについて親子で話す機会って、なかなか無いですよね。
絵本を通して、一度お子さんとゆっくりお話ししてみてはいかがでしょうか。
こうして穴があけられた 『ドーナツのあなのはなし』
13歳のハンソン・グレゴリーは、海で働くことになりました。
さまざまな仕事を身につけたハンソンは、その後19歳で世界一速い船の船長になりました。
そんなハンソンがドーナツのことを考えるようになったのは、16歳のころです。
そのころのハンソンは、コックの助手をしていました。
まるめたパン生地を揚げて、まとめて転がす。
すると、甘くてカリカリ!なのに中は生のままでベトベト。
食べると胃の中に大砲の”たま”が落ちたような感覚になるのです。
ある日、ハンソンはふと形を変えることを思いつきました。
その形とは…
これは、元気で、勇気があって、頭がよかった、ハンソン・クロケット・グレゴリー船長が考え出した「あなあきドーナツ」のお話です。
パン生地を揚げてまとめて転がしたものを、水夫たちは”おもり”と呼びました。
それほど胃の中にずしんと重く感じたのでしょう。
ハンソンはコショウの缶の丸いふたを使って、おもりの真ん中に穴をあけました。
そして、それを煮立ったラードの中に放り込みました。
「こんな変な形は見たことがない!」と、水夫たちは驚きながら口に放り込みます。
さて、そのお味は…?
絵本で描かれている絵も、まるでドーナツのような丸い形に切り抜かれています。
絵を見ているだけでも楽しめますよ。
お話のタネ
今ではおいしいおやつとしておなじみのドーナツ。
海の上で、しかも後に船長となる人が作ったなんて、知っていましたか?
ハンソンのように、今まで困っていたこともちょっとした変化で新たな発見につながるかもしれません。
そこで、お話のタネ。
お子さんと一緒に、新開発できそうなものを考えてみよう
ドーナツのような食べ物や、文房具など、ひらめきを実行できそうなものだとより良いですね。
きっとハンソンのすごさをより実感できます。
もしかしたら、ハンソンのように名を残すような新開発になるかもしれませんよ。
音が大好きな男の子 『ぼくは発明家 アレクサンダー・グラハム・ベル』
アレクサンダー・グラハム・ベルは家族からアレックと呼ばれており、音を聞くことが大好きな子どもでした。
「どうして、僕の耳には、音が聞こえるのだろう?」
「なぜ、聞こえる音と聞こえない音が、あるんだろう?」
そんなことを不思議に思いながら過ごしていました。
アレックのお母さんは、子どものころから耳があまり聞こえませんでした。
でも、絵やピアノが上手で、ピアノを弾く時には耳につけたホースのような道具をピアノの上に置いていました。
アレックはその姿を見て、「世界中のいろんな音を、お母さんの耳に、もっと大きく、もっとはっきり、届くようにしたい!」と心から思うようになったのです。
これは、今では多くの人が手に持っている電話を発明した、アレクサンダー・グラハム・ベルのお話です。
音に興味をもったアレックは、お父さんに「音は振動なのだ」と教えてもらいます。
アレックは自分の体を使って実験したり、さまざまなことを見聞きして考えを深めたり…
知りたい気持ちをどんどん高めていき、たくさんの実験や発明に挑戦していきました。
さて、大人になったアレックはいったいどうやって電話を発明したのでしょうか?
そして、なぜ電話を発明しようと考えたのでしょうか?
アレックのように、子どもたちにも「知りたい」「好き」の気持ちを大切にできる人になってほしいですね。
お話のタネ
この絵本では、こんなお話のタネはいかがでしょうか?
自分たちの身近な物事や、お子さんが好きなものの成り立ちや由来について、一緒に調べてみる。
誰が、どんな経緯でつくったものなのか知ることで、そのものへの関心がさらに深まります。
お子さん自身がつくる側の視点で、さらなる発展型や改善点などを考えてみるのもいいですね。
アレックのように、困っている誰かのためにという思いで考えてみると、ひらめきの糸口がつかみやすいですよ。
また、好きなものや気になることについて、とことん突き詰めて考えるということも大切です。
気になることは本を読んで調べたり、知識を増やしたりすることで、考えを深めることにもつながりますよ。
まとめ
自分の名前を大切にすること。
自分が正しいと思った道を進むこと。
どうすればより良いものになるか試行錯誤すること。
誰かのために、そして自分が興味をもったことをとことん突き詰めること。
実在する人物の物語だからこそ、絵本の中に子どもたちに感じてほしいことがたくさんつまっています。
読み終えたら「どんなことを考えたか」をぜひ親子で話し合ってみてくださいね。
〇●今回紹介した本●〇
◆『しげちゃん』
<室井滋 原作/長谷川義史 絵/金の星社 刊>
◆『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』
<キース・ネグレー 作/石井睦美 訳/光村教育図書 刊>
◆『ドーナツのあなのはなし』
<パット・ミラー 文/ヴィンセント・X・キルシュ 絵/金原瑞人 訳/廣済堂あかつき 刊>
◆『ぼくは発明家 アレクサンダー・グラハム・ベル』
<メアリー・アン・フレイザー 作/おびかゆうこ 訳/廣済堂あかつき 刊>
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