「学習障害」「発達障害」という言葉を聞いたことはありますか?
近年では子どもたちだけでなく、大人が抱える悩みとして取り上げられていることも多いです。
もしもわが子が、周りの子どもたちが、こういった悩みを抱えているとしたら?
私たちにはいったい何ができるのでしょうか?
この記事では、岩崎書店「学習障害・発達障害・いじめを理解する本」シリーズ絵本の中から、3冊を紹介します。
自分たちに何ができるか。
子どもたちのために、何をするべきなのか。
絵本を通して一緒に考えてみませんか?
・学習障害・発達障害について考える絵本を知りたい
・ディスレクシアについて描かれた絵本が読みたい
・アスペルガー症候群について描かれた絵本が読みたい
・ADHDについて描かれた絵本が読みたい
「学習障害」「発達障害」とは

文部科学省では「学習障害」について、次のように定義しています。
学習障害とは、全般的に知的発達に遅れはないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力についてなかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態をいいます。
【文部科学省HP 学習障害(LD)の定義より一部抜粋】
学習障害は「読字」「書字」「算数」の3つにわかれています。
症状のあらわれ方や程度に個人差があり、発見や診断が難しいとも言われています。
また、厚生労働省では「発達障害」について、次のように説明しています。
発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、子どもが生きづらさを感じたりすることもあります。
【厚生労働省HP 発達障害より一部抜粋】
生まれつき脳の働き方に違いがあり、その症状や特性のあらわれ方はさまざまです。
しかし、環境や学びの場を整えたり、工夫したりすることで、その困難さを軽減させることもできます。
絵本紹介
がんばってるのに、どうして? 『なまけてなんかない!』

<品川裕香 作/北原明日香 絵/岩崎書店 刊>
かけっこだって、サッカーだって、虫を捕まえるのだって、何だってできる!
友だちにも優しくできる!
おれ、みんながだいすきで、みんななかよし!
だけど、1年生になった日から・・・
昨日勉強した字なのに、何だっけ?
国語の教科書が読めない。
これって、おれの努力が足りないのかな・・・

「ディスレクシア」とは
この絵本は、ディスレクシアという学習障害をテーマにしたものです。
絵本の中で、ディスレクシアについて次のように説明されています。
知的には問題がないのに、読み書きがスムーズにできない状態のことを言います。
(中略)ひらがな・カタカナがなかなか覚えられず、「れ・わ」「ね・ぬ」など似た形の字を読みまちがえたり書きまちがえたり、拗音や促音が苦手だったり、音読はたどたどしい読み方になったり、読み飛ばしが多いなどの特徴が見られます。
(中略)日本語の読み書きにつまずくということは、たとえば数学も概念等は理解できていても問題文を読む段階でつまずいたり、英語もアルファベットをなかなか覚えられないため、会話はできても、読み書きとなると、なかなかできるようにならないなど、ほかの教科にも困難さが生じてきがちです。
【『なまけてなんかない!』裏表紙見返しより一部抜粋】
知的には問題がないため、話し言葉の理解や表現にも特に問題はありません。
「読み書きに特化してできないことがある」という状態なので、本人の努力不足や家庭環境の問題だと思われてしまうこともあるそうです。
もちろん、本人は決して怠けているわけではありません。
そのことに周りが気づけずにいると、本人の自己効力感(”自分はできる”と信じること)はどんどん失われ、うつや不安障害になってしまうこともあります。
絵本を読んで考えよう
主人公の男の子・りんぞうが小学校に入り、国語の学習が始まると、困ったことが起こり始めます。
昨日習ったはずの字がわからなかったり、教科書が読めなかったり・・・
毎日夜遅くまで勉強を頑張っているのに、どうしてもできないのです。
そんなりんぞうに、先生やお母さんはこう言います。
「もうちょっと頑張ろう」
「みんなできてるぞ」
「ママもパパもできたんだから、りんぞうもできる」
「ちゃんとやってるの?」
りんぞうの苦しみに周りの大人たちはなかなか気づけず、りんぞうはどんどん自信をなくしてしまいます。

一生懸命頑張っているのに、「もっと頑張れ」と言われる辛さ。
りんぞうは、できない自分を責め続けるのです。
周りの大人たちは、いったいどうするべきなのでしょうか?
そして、もしあなたのお子さんが同じ苦しみを抱えていたら、あなたならどうしますか?
絵本を通して、一緒に考えてみませんか?
ぼくには特別な力があるんだ 『ぼくはスーパーヒーロー』

<メラニー・ウォルシュ 作/品川裕香 訳/岩崎書店 刊>
ぼくはアイザック。スーパーヒーローなんだ。
みんなと同じに見えるかもしれないけど、ぼくには”特別な力”があるんだ。
何でスーパーヒーローかって?
それは、どんな細かいことでも完璧に、いくらでも覚えられるからさ。
トランポリンだって、ずっととんでいられるよ。
でも、あいさつするのを忘れちゃうこともあるんだ。
ほかにもこんなことがあって・・・

「アスペルガー症候群」とは
この絵本は、アスペルガー症候群という発達障害をテーマにしたものです。
絵本では、アスペルガー症候群をもつ子どもたちの様子について、次のように説明されています。
・友だちと遊ぶよりも一人で遊ぶほうを好む
【『ぼくはスーパーヒーロー』あとがきより一部抜粋』】
・光や音など特定の感覚に過敏
・記憶力が優れている
・特定の感触を好む
・コミュニケーションには問題がないようにみえるのに言葉のキャッチボールが苦手
・日課など決まったことの変更をひどく嫌がる
・相手の気持ちに共感したり思いを汲み取ったりすることが苦手
・耳からの情報に注意するのが苦手
・自分が想定していたようにできないと激しく泣くとが暴れるなどパニックを起こす
これらはほんの一例で、実際に子どもたちが見せる姿は様々です。
少しでも早く周りが気づき、子どもに適した声かけなどをするべきなのですが、子どもたちが見せる姿が幅広いため、気づきが遅れてしまうこともあります。
絵本を読んで考えよう
「ぼくはスーパーヒーローだ!」と話すアイザック。
記憶力が良く、好きなことに関してはいくらでも話せます。
でも、思ったことをすぐ口にしてしまったり、音が聞こえすぎてしまったりと、困っていることもあるのです。
この絵本では、そんなアイザックの姿から、アスペルガー症候群をもつ子どもたちについて知ることができます。
そして、周りの大人たちはどうすれば良いのかを考えさせてくれます。

例えば、「人の目を見るのがこわい」と話すアイザックに、お父さんは「目じゃなくておでこを見ればいい」と教えてくれるのです。
子どもたちがいったいどんなことに困っているのか。
それに対して、どんなふうに行動すれば良いとアドバイスすれば良いのか。
アイザックと一緒に、あなたも考えてみてはいかがですか?
自分をどうにかしたい 『ボクはじっとできない』

<バーバラ・エシャム 文/マイク&カール・ゴードン 絵/品川裕香 訳/岩崎書店 刊>
「デイヴィッド!」
ゴールスキー先生は今日も地獄の底から聞こえてくるような、恐ろしい声でボクを注意する。
「また友だちのじゃまをしているの!」
「えんぴつをカタカタ鳴らすのはやめなさい!」
「なんでこんなことをやったの!」
ゴールスキー先生は、きっとボクのこと好きじゃないんだ。そうに決まってる。
ボクが先生をイラつかせていることぐらい、わかってる。
でも、どうやったらじっとしていられるか、わかんないんだ・・・。

「ADHD」とは
この絵本は、ADHD(注意欠如・多動性障害)という発達障害をテーマにしたものです。
絵本では、ADHDについて、次のように説明されています。
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、生まれつき、
・不注意(集中できない、モノをなくしやすい、順序立てて活動に取り組めない等)
・多動性(おしゃべりだったり、じっとしていられない等)
・衝動性(考えるより先に動く、待つことが苦手、せっかちでイライラする等)などの症状をもつ発達障害の一つです。
ADHDは、多動性・衝動性優勢型のほか、不注意優勢型、混合型に分類されます。
【『ぼくはじっとできない』あとがきより一部抜粋】
また、文部科学省の調査によればADHDを疑われる子どもは全体の2.5%いると言われています。
ADHDの治療方法としては、薬物療法や行動療法、それらを併用した治療など、さまざまです。
また、近年では子どもだけでなく、大人のADHDのニュースなどで取り上げられています。
絵本を読んで考えよう
デイヴィッドは、自分が先生を怒らせることをしてしまうと自覚していました。
でも、わざとやったことなんて一度もないのです。
自分でもどうにかしたい。でもわかんない!
怒られたり、失敗してから気がつくのです。

デイヴィッドは、他のことを考え始めると授業のことを考えられなくなってしまいます。
本当は授業に集中したいと思っているのに、すごいアイデアが思いつくと、もうそのことしか頭に浮かばないのです。
それでもなんとかしたいデイヴィッドは、「じっとできない」を何とかする方法を見つけることを決心します。
「いい方法が見つかれば、ボクの最高の発見になるかもしれない」
そんなデイヴィッドが一生懸命考え、用意したものは「解決救急箱」でした。
さて、「解決救急箱」とはいったい何なのでしょうか。
次々にアイデアが浮かぶ自分を否定するのではなく、自分だからこそできることを考えたデイヴィッド。
そんな彼の姿から、気づくことや学ぶことがたくさんある絵本です。
まとめ

岩崎書店「学習障害・発達障害・いじめを理解する本」シリーズから、3冊の絵本を紹介しました。
発達障害や学習障害をもつ子どもたちと、私もたくさん出会ってきました。
そして、そんな子どもたちに共通して言える大切なことは、「自分に自信をもつこと」だと思います。
絵本で紹介した子どもたちのように、「できない自分」とわかっているのに、どうしようもないまま日々過ごし続けなければならない。
そんな毎日だと、どんどん自信をなくしてしまいますよね。
それは子どもたちにとって、とてもつらいことです。
少しでも早く子どもたちの様子に気づき、その姿に適した支援をすること。
そして、「できる自分」を増やして、どんどん自信をつけていくこと。
それが何より大切なことだと私は思います。
この記事で紹介した絵本の他にも、岩崎書店HPの特設サイトではさまざまな本が紹介されています。
こちらもあわせてチェックしてみてください。
たくさんの子どもたちが自分に自信をもって、笑顔いっぱいの毎日を過ごせますように。
〇●今回紹介した本●〇
◆『なまけてなんかない! ディスレクシアの男の子のはなし』
<品川裕香 作/北原明日香 絵/岩崎書店 刊>
◆『ぼくはスーパーヒーロー アスペルガー症候群の男の子のはなし』
<メラニー・ウォルシュ 作/品川裕香 訳/岩崎書店 刊>
◆『ボクはじっとできない 自分で解決法をみつけたADHDの男の子のはなし』
<バーバラ・エシャム 文/マイク&カール・ゴードン 絵/品川裕香 訳/岩崎書店 刊>
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