たくさんの本に出会うチャンスの夏休み。
「今年はどんな本を読もうかな」とワクワクしている子もいるのではないでしょうか。
反対に、読書感想文という課題に気が重くなっている子もいるかもしれませんね。
ここでは、2025年度読書感想文コンクールの課題図書(小学生の部)を紹介します。
全12冊の本の簡単な紹介とあわせて、“どんなことを考えながら読めば良いか”という考察のヒントもお伝えします。
本を読みながら考えを深めたい子や、読書感想文にどんなことを書けば良いかわからない子に、少しでもヒントになれば嬉しいです。
また、本を通して親子でじっくり会話を楽しむきっかけにもなると思います。
親子の会話が花開く「お話のタネ」になりますように。

元小学校教諭の視点で「こんなことを考えてみては?」のヒントを紹介しています。
少しでも参考になれば嬉しいです。
・2025年度読書感想文コンクールの課題図書(小学生の部)が知りたい
・それぞれの課題図書の内容やあらすじが知りたい
・どんなことを考えて読むと良いか、考察のヒントが知りたい
低学年の部
『ライオンのくにのネズミ』

<さかとくみ雪 作/中高公論新社 刊>
かんたん紹介
ぼくたちネズミの家族は、ライオンくにに引っ越した。
ぼくは今日から、ライオンのくにの学校へ行くことになった。
ライオンの学校はなにもかもが大きい。
みんなライオン語を話す。
そのうちぼくは食べられてしまうんじゃないか…。
家に帰って話しても、お父さんもお母さんも「ライオンのくにはいいところ」と言う。
ぼくはますます不安になった。
もし、お父さんもお母さんもライオン語を話すようになったら…
ぼくはどうなっちゃうのかな?
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●自分がネズミだったら、ライオンのくにに転校したらどんな気持ちになるか?
→嬉しい、悲しい、ワクワク、不安、帰りたい、帰りたくない…など(理由も)
●リスの女の子がライオンに笑われている時、自分ならどうする?
→ライオンに怒る、何も言えない、隠れている…など(理由も)
●今まで見ようとしなかった友だちの良いところに気づけたことはある?
→(ある)どんなときに、どんなことに気づけた、そのときどう思ったか、これからどうしたいか
→(ない)自分にもこれから新しい発見がありそうか、これからどうしたいか
自分とは大きさも言葉も全く違う、ライオンのくにに転校してきたネズミ。
周りがこわくて、ひとりぼっちな気がして、嫌でしかたない毎日を過ごしていました。
「嫌い」「苦手」と決めつけて、つい相手を避けてしまうことって、子どもも大人もあると思います。
でも、きちんと相手と向き合うことはとても大切なことです。
そしてそれはとても勇気がいることで、自分自身の成長にもつながります。
そんなことを考えさせてくれる絵本です。
最後の1ページには、大人もハッとさせられること間違いなしです。
《本のテーマ》
友だち/学校生活/人と向き合うこと/勇気
『ぼくのねこポー』

<岩瀬成子 作/松成真理子 絵/PHP研究所 刊>
かんたん紹介
学校からの帰り道、ぼくは一匹のねこと出会った。
そのねこは次の日の朝も、帰りの時間になってもそこにいた。
「帰る家がないのかな?」「ごはん食べてないのかな?」
そんなことを考え出すと、家に連れて帰りたくなった。
「ぼくんちのねこになってよ」
お母さんを説得し、家で飼うことになったそのねこに、ぼくは「ポー」と名前をつけた。
これからいっぱいかわいがろうと思った。
ある日、ぼくのクラスに森くんという転校生がやってきて…
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●森くんからねこの話を聞いたとき、自分ならどうする?
→ポーの話をする、ポーのことは黙っている、詳しく聞いてみる、違う話をする…など
●森くんに冷たくしてしまったとき、自分ならどんな気持ちになる?
→悲しい、イライラする、仕方ない、本当のことを言う…など
●家族や友だちに嘘や隠し事をしたことはある?
→どんなこと?どんな気持ちだった?そのときどうした?これからの自分は?
ポーへの大好きな気持ちがどんどん高まっていく主人公。
そんなとき、“森くんの家のねこがいなくなってしまった”と聞きます。
「ポーはぼくのねこだ」という気持ちと「ポーは森くんのねこかもしれない」という気持ちの葛藤。
その心の描写が細やかで、大人が読んでも胸が苦しくなってしまいます。
つい嘘や隠し事をしてしまって「正直に言おうかどうしよう」と悩んだ経験がある子はたくさんいると思います。
そんなとき、どうすればいいか?
親子で読みながら考えてもらいたい一冊です。
《本のテーマ》
正直/葛藤/隠し事/友だち
『ともだち』

<リンダ・サラ 作/ベンジー・デイヴィス 絵/しらいすみこ 訳/ひさかたチャイルド 刊>
【写真引用:ひさかたチャイルド】
かんたん紹介
ぼくとエトは、毎日一緒に遊ぶ。
丘の上にダンボール箱を引っ張っていって、箱の中に入って遊ぶのが最高に楽しい。
エトとぼくはいつも仲良し。
とっても仲良しで、何をするのも一緒。
ぼくは「ふたり一緒」が大好きだった。
ある日、シューという男の子がダンボール箱を持って丘にやってきた。
「ぼくも仲間に入れてくれる?」
エトは「いいよ」と答えて…
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●シューが「仲間に入れて」とやってきたとき、自分ならどうする?
→いいよ/いやだ(理由は?)
●エトとシューが迎えにきたとき、自分ならどうする?
→一緒に行く/行かない(理由は?)
●今までに「ぼく」と同じようなことがあった?
→友だちが増えた/なじめなかった/仲間外れになった、してしまった/仲たがいした…など
→そのときどうした?どんな気持ちだった?これからの自分はどうしたい?
一緒にいると何をするのも楽しく感じる、大親友のエト。
「ふたり一緒」が大好きだったけど、そんな日々に変化が起こります。
2人が3人に変わってしまったことに、ぼくの気持ちがついていかない。
同じような経験をした子もいるのではないでしょうか?
関係の変化についていけない心の揺れ動きが素直に描かれているので、子どもたちも共感しやすいと思います。
ぼくの立場だけでなく、エトやシューと同じ立場になって考えてみるのもいいかもしれませんね。
《本のテーマ》
親友/新しい友だち/すれ違い
『ワレワレはアマガエル』

<松橋利光 文・写真/アリス館 刊>
かんたん紹介
学校や公園で見かける、アマガエル。
じっくり観察したことはありますか?
アマガエルについて、どんなことを知っていますか?
美しく、かわいらしいアマガエルの写真を見ながら、
アマガエルのことをもっとたくさん知ってみよう!
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●(本を読む前に)アマガエルのどんなことを知っている?
→アマガエルの好きなところや苦手なところ、知っていることをメモしておくと◎
●本に出てきたアマガエルのことについて、一番心に残ったことは?
→驚いたこと、初めて知ったこと、調べてみたいと思ったこと、など
●(本を読み終えて)アマガエルについて「もっと知りたい」と思ったことは?
→こんな姿を見てみたい、こういう時はどうしているのか知りたい、など
→実際にアマガエルを観察したり、図鑑などで調べたりして考えを深めるのも◎
本のタイトルや表紙の通り、アマガエルが主人公となった写真絵本です。
春夏秋冬の季節ごとに変化を見せるアマガエル。
その姿を美しい写真でたくさん楽しめます。
草むらや田んぼにたくさんいるイメージのアマガエル。
最近はそういった場所が減ってきて、アマガエルを見ることも減ってきました。
「自然の中で会える子も、なかなかな会えない子も、カエルを身近に感じてほしい」という思いを込めて、松橋さんはこの本を書かれたそうです。
親子でも楽しめる一冊なので、それぞれのお気に入りの写真や仕草を決めたり、一緒にアマガエルを探しに出かけたりするのもいいですね。
《本のテーマ》
自然・生きもの/写真絵本/観察・知識
中学年の部
『ふみきりペンギン』

<おくはらゆめ 作・絵/あかね書房 刊>
かんたん紹介
「左で鉛筆を持つのは変じゃない?」
普通と違うだけでからかってくる友だちに、ゆうとはモヤモヤしていました。
そんなことを考えながら歩いていると、踏切の向こうに5匹のペンギンが並んでいました。
ペンギンたちはゆうとが左利きなことについて、次々に「変だ」「変わってる」と話します。
しかし、5匹目のペンギンが「でもみんなと違ってて、かっこいいよね」と言うのです。
踏切が開き、ペンギンに話しかけようとすると、ペンギンたちはいなくなってしまいました。
そのころ、同じく3年生のるりは、友だちのななことの関係に悩んでいました。
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●本に出てきた不思議な動物たちの中で、誰に会ってみたい?
→どうしてその動物に会いたいのか、会ったらどんなことを話したいか
●自分は普通がいいと思うか、普通を壊したいと思うか?
→どうしてそう思うのか、そう思ったのはどんなときか
●自分のことが嫌に感じたことはあるか?
→今も嫌に感じる:どうしたら解決すると思うか?これからどんな自分になりたいか?
→過去に嫌に感じたことがあった:どうやって解決したか?今の自分をどう思うか?
この物語には、ゆうとやるりのように、悩みを抱える子どもたちが登場します。
自分に自信が持てない子、友だちとの関係がうまくいかない子…
そんなとき、子どもたちは“不思議な動物”と出会います。
その不思議な出会いが、子どもたちを少しずつ変えていくのです。
この本を読んでいると、「普通って何だろう?」ということを考えさせられます。
自分に自信が持てない子や、悩みを抱える子たちにぜひ読んでもらいたい一冊です。
次々に登場する不思議な動物たちにも注目です!
《本のテーマ》
友だち/コンプレックス/自分と向き合う
『バラクラバ・ボーイ』

<ジェニー・ロブソン 作/もりうちすみこ 訳/黒須高嶺 絵/文研出版 刊>
かんたん紹介
転入生のトミーは、バラクラバ帽をかぶっていた。
授業中も、休み時間も、ごはんを食べるときもかぶったまま。
主人公のドゥーガルと親友のドゥミサニは、どうしてバラクラバ帽をかぶっているのか気になって仕方ない。
そして、それはクラスのみんなも同じ気持ちだった。
ドゥーガルとドゥミサニは、クラスのみんなと協力して、トミーがバラクラバ帽をかぶっている理由を聞き出そうと計画を立てるが…
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●自分ならトミーにバラクラバ帽をかぶっている理由を聞く?
→聞く/聞かない(理由も)
●トミーが上級生にバラクラバ帽を無理矢理取られそうになっている場面に出くわしたとき、自分ならどうする?
→助けに行く/そのまま見ている(理由も)
●学校生活の中で、「人と違う」と感じることはあるか?
→どんなこと?どんな気持ちだった?そのときどうした?これからの自分は?
→他の人に対して「人と違う」と思ったことは?そのときどうした?
表紙のイラストで、赤とオレンジの横じまの被り物をしているのがトミーです。
そして、その被り物がバラクラバ帽です。
バラクラバ帽をかぶっている理由をなかなか聞き出せないドゥーガルとドゥミサニ。
クラスのみんなで協力し、トミーから理由を聞き出そうとしますが、物語が進むにつれてその作戦は意外な方向へと向かいます。
個性豊かなクラスの仲間たちと、その絆にも注目です。
「もし自分のクラスにトミーのような子が転入してきたら」と考えながら読んでみるのもいいですね。
意外な物語の結末には、大人も子どもも驚き、感動すること間違いなしです!
《本のテーマ》
学校生活/友情/クラス、学級の仲間
『たった2℃で…』

<キム・ファン 文/チョン・ジンギョン 絵/童心社 刊>
【写真引用:童心社】
かんたん紹介
人間の体温は、36.5℃が大切だと言われています。
たった2℃上がっただけでも体はつらく、苦しい状態になってしまいます。
なので、健康な体温を保つために、人間はさまざまな方法をとっています。
そして、それは動物たちも同じです。
では、もし海水の温度が2℃上がったら…
地球全体の温度が2℃上がったら…
いったいどんなことが起こるのでしょうか?
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●自分の体温が2℃上がったとき、体にはどんな変化が起こる?
→どんなことがつらい?心の状態は?それがずっと続くとしたらどう思う?
●本に出てきたさまざまな生き物たちのことを知り、どんなことを考えたか?
→特に印象に残った生きものは?本に出てきた以外にも知っていることは?
●地球が病気にならないようするために、自分たちにできることは?
→実践していること、これから実践しようと思うことは?
→この本を読んで気になったことを自分で調べてみるのも◎
たった2℃気温が上がるだけで、地球上ではさまざまなことが起こると想定されています。
地球温暖化によって、自然環境はもちろん、私たち人間にもさまざまな影響が起こっています。
それは、生きものたちにとっても同じことです。
人間や生きものたちがこの先も健康でいられるために。
そして、いつまでも健康な地球でいるために。
私たちにはどんなことができるのでしょうか?
本を通して、親子でじっくり考えてみるのもいいですね。
《本のテーマ》
自然環境/生きもの/地球温暖化
『ねえねえ、なに見てる?』

<ビクター・ベルモント 絵と文/金原瑞人 訳/河出書房新社 刊>
【写真引用:河出書房新社】
かんたん紹介
トーマスは、色覚異常をもつ男の子。
「他の人とは色の見え方が違う」と言われている。
でも、自分ではそのことを少しも変だとは思わない。
じゃあ、他の人たちはいったいどんな見え方をしているの?
トーマスと11人の家族たちの“見え方”を通して、君はどんなことを感じるかな?
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●トーマスやトーマスの家族の見え方を通して、どんなことを考えたか?
→不思議、面白い、自分と同じ、変だと思った…など
●自分はどんな「メガネ」をかけていると思うか?
→自分自身にはどんな風に見えていると思う?自分のメガネを他の人がかけたらどう言うと思う?
●一人ひとりが違うメガネをかけていることを、どう思うか?
→「この人は自分とは違うメガネをかけている」「自分は人と違うメガネをかけている」と感じたことはあるか?
トーマスの家族はみんな個性豊か。
そんなみんなの目には、それぞれいったいどんな見え方が広がっているのでしょうか?
同じ景色を見ていても、見え方も感じ方も人それぞれ。
それって変なこと?悪いこと?それともいいこと?
今この景色は、家族にはどんなふうに見えているのかな?
あのとき、自分はこうだと思ったけど、友だちには違うように見えていたのかな?
そんなことを考えるきっかけとなる絵本です。
《本のテーマ》
見え方・考え方/個性/人と同じ・違う
高学年の部
『ぼくの色、見つけた!』
『ぼくの色、見つけた!』
<志津栄子 作/末山りん 絵/講談社 刊>
かんたん紹介
主人公の信太朗は、年長の頃から“見え方”に違和感を感じていた。
色の違いがわからなかったのだ。
2年生の夏、信太朗が「色覚障害」だということがわかった。
ある日、学校で似顔絵を描いたら「口の色が変だ」とバカにされた。
色の違いに気づかず塗ってしまっていたのだ。
それ以来、信太朗は絵を描くことが楽しくなくなった。
そして「周りに色覚障害がばれないように」と、心をすり減らして学校生活を送るようになった。
しかし、5年生になって担任の平林先生と出会い…
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
★こんなことを考えてみては?★
~考察のヒント~
●「人と違う」と分かったとき、自分ならどんなことを考える?
→家や学校ではどんなふうに過ごす?友だちや家族の前では?
●苦手なことや自分の弱さを人に言ったことがある?
→誰に言えた?どんなこと?どうしてその人に言えた?
→言えないのはどうして?困ったときにどんな気持ちになる?
●「自分だけの〇〇」を見つけたことはある?
→どんなこと?どうやって見つけた?見つけたときはどんな気持ちだった?
→これからどんなことを見つけてみたい?
家でも学校でも本音が言えない毎日が、平林先生との出会いによって少しずつ変わっていく信太朗。
平林先生は、信太朗にもクラスのみんなにも、「苦手なことや自分の弱さを素直に伝えていいんだよ」と語りかけます。
先生の言葉を聞いて、信太朗たちはだんだんと“弱さ”を出せるようになっていきます。
そして、そんな弱さをもつ自分にしか見えない世界があることに気づき始めるのです。
信太朗の心の成長を描いた物語。
自分に自信がもてない子どもたちが「自分にしか見えない世界」を見つけるきっかけになってほしい一冊です。
《本のテーマ》
個性/苦手なこと・弱さ/学校生活/家族/友情
『森に帰らなかったカラス』

<ジーン・ウィリス 作/山﨑美紀 訳/徳間書店 刊>
かんたん紹介
物語の舞台は1957年、戦後間もないロンドン。
動物が大好きなミックは、親友のトミーと一緒に、公園であるものに出会います。
それは、ニシコクマルガラスのひなでした。
ニシコクマルガラスのひなはけがをしていたので、ミックは家に連れて帰り、両親と一緒に手当てをしました。
そして、このニシコクマルガラスに「ジャック」と名前をつけて、自分が育てることを決意するのです。
そんなとき、ミックは父にまつわるある秘密を知ってしまいます。
「大好きなお父さんが…そんなはずはない」と、その秘密を受け入れられないミックですが…。
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●「ジャックを野生に返した方が良い」と言われたとき、自分ならどうする?どんなことを考える?理由は?
●ジャックとの別れの時、自分ならどんな言葉をかける?
→家族やペットとの別れの経験があるなら、そのときのことを思い出してみるのも◎
●父の戦時中の秘密について真相を知ったとき、自分ならどうする?どんなことを考える?
→「自分が戦時中の父と同じ立場だったらどうするか」と考えるのも◎
これはロンドン動物園の元主任飼育員の少年時代の実話をもとにした物語です。
戦争後間もない頃、世の中はまだ戦争から抜け出せきれずにいました。
そんな人々の心の傷の癒しとなったのが、ジャックでした。
ジャックが大好きだからこそ一緒にいたい。
でも、ジャックにとってこの環境はベストなのだろうか。
そんな葛藤を抱えるミックの心の揺れが描かれています。
また、戦後を生きる帰還兵についても考えるきっかけとなるお話です。
世界大戦時のイギリス・ロンドンについて詳しく知らないというときは調べ学習に取り組み、さらに考えを深めるのも良いと思います。
《本のテーマ》
家族/友情/動物
『マナティーがいた夏』

<エヴァン・グリフィス 作/多賀谷正子 訳/ほるぷ出版 刊>
かんたん紹介
主人公のピーターは、おじいちゃんが子どもの頃にマナティーと出会った話が大好きだった。
そんなおじいちゃんがアルツハイマー病(認知症)になってしまい、「自分が世界一のお世話係になる」と決意する。
その一方、ピーターは小学校最後の夏休みに、親友のトミーと一緒に「生き物発見ノート」を完成させるという目標ももっていた。
ある日の生き物探索中、ピーターとトミーはけがをしたマナティーと出会う。
2人はそのマナティーに「ゾーイ」と名前をつけ、“マナティーを救いたい”という思いを強くもった。
大好きなおじいちゃん、トミー、そしてゾーイと過ごす夏休み。
自分が掲げた目標を完璧にやり遂げることにやる気満々だったピーターだったが…。
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●トミーから引っ越すことを隠されていた(知らせてもらえなかった)と知ったとき、自分ならどんなことを考える?どんな行動を起こす?理由は?
→悲しい、寂しい、悔しい、腹が立つ/たくさん話したい、もう会いたくない…など
●インディゴ川ボートクラブの会合で自分がスピーチをするなら、何を伝えたい?
→本を読んで感じたことはもちろん、自分で調べたことから考えを広げるのも◎
●(あとがきより)人間と自然と生き物がともに生きていくために、どんなことができるか?
→マナティーのような絶滅のおそれがある生き物について調べてみるのも◎
大好きなおじいちゃんが病気になってしまい、お世話係をすることになったピーター。
しかし上手くいかないことも多く、病気になったおじいちゃんを受け入れることができない自分もいました。
そんなとき、トミーやゾーイを取り巻く環境に変化が訪れます。
希望にあふれる夏になるはずだったのに、現実は厳しく…。
ピーターが抱えるさまざまな困難や迷い、そしてそれを乗り越える勇気を描いた物語。
大人が読んでも泣ける一冊です。
ピーターは小学5年生(アメリカでは小学校6年目からが中学校)と子どもたちと同じ年齢・年代なので、「同じ立場になったら、自分ならどうしよう…」と感情移入しやすいと思います。
本をきっかけに、動物たちを取り巻く自然環境について、自分なりに調べて知識や考えを広げるのもおすすめです。 調べたことを自由研究とリンクするのも良いですね。
《本のテーマ》
家族/親友/自然/勇気
『とびたて!みんなのドラゴン:難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』

<オザワ部長 著/岩崎書店 刊>
かんたん紹介
小学6年生のマナミは、内気で臆病な女の子。
健康観察や授業の返事もできない自分が嫌になる毎日を送っていました。
そんなときに出会ったのが、合唱部の歌声と一生懸命に指揮をする竹永先生でした。
その歌声と先生の姿に心打たれたマナミは、合唱部に入ることを決意します。
竹永先生は今年合唱部の顧問になったばかりで、合唱の経験はなく、歌も下手でした。
でもいつも全力で一生懸命!
そんな先生を見ていると、マナミは「自分を変えたい」と強く思うようになりました。
しかし、竹永先生にはある秘密があったのです。
こんなことを考えてみては? ~考察のヒント~
●先生の病気の話を聞いて、自分ならどうする?どんなことを考える?
→マナミの立場、先生の立場それぞれで考えるのも◎
●自分にとっての「卵」は?
→割れたことはある?割ってみようと思ったことはある?そのときどんな思いだった?
●自分のドラゴンは、今どんな姿?どんな大きさ?
→成長しているか、壁は壊せたか。これまでにどんな出来事を乗り越えて成長してきたか
2022年度、合唱部がコンクールで金賞を取ることを目指して奮闘した1年を描いた実話です。
「3年前の実話」「学校生活を描いた物語」ということもあってイメージしやすく、子どもたちも感情移入しやすいと思います。
字数は高学年4冊の中では少なめなです。
「病気を抱えながらも全力で生きたい」「全力で合唱部と向き合いたい」という竹永先生の姿には、大人も子どもも心打たれます。
そんな先生を見て、子どもたちはどんな成長をみせてくれるのか、注目です。
「いま、自分のことが好きですか?幸せですか?」という先生の問いに、本を読み終えた自分なら何と答えるか?
今の自分、そしてこれからの自分と向き合える一冊です。
《本のテーマ》
挑戦・成長・勇気・仲間
過去の課題図書から選ぶ
「今年度の課題図書の中に気になるものがなかった」
「でもどうやって本を選べば良いかわからない」
「学年相当の本の選び方がわからない」
そんな方におすすめなのが、過去の課題図書です。
読書感想文コンクールは、過去の課題図書から選んで書くことも可能です。
全国学校図書館協議会HPに、過去の課題図書一覧が掲載されています。
また、当ブログでは2023年度・2024年度の読書感想文コンクールの課題図書(小学生の部)を紹介しています。
考察のヒントも紹介しているので、こちらもよければ参考にしてみてください。
ちなみに、読書感想文コンクールに出品する際、過去の課題図書は「自由読書」の部門での出品となります。
お間違えのないように、ご注意ください。
まとめ
2025年度読書感想文コンクール課題図書(小学生の部)を紹介しました。
各学年部ごとに紹介しましたが、必ずしも自分の学年相当の本を読まなければならないわけではありません。
低学年の子が中学年向けの本を読んでもOKです。
ただしその場合、選んだ本が課題図書であっても、「課題読書」ではなく「自由読書」での出品となりますので、ご注意ください。
詳しくは読書感想文コンクールHPにてご確認ください。
お子さんがすてきな本に出会える夏になりますように。
長文読んでいただき、ありがとうございました。
●〇今回紹介した本●〇
【低学年】
◆『ライオンのくにのネズミ』
<さかとくみ雪 作/中高公論新社 刊>
◆『ぼくのねこポー』
<岩瀬成子 作/松成真理子 絵/PHP研究所 刊>
◆『ともだち』
<リンダ・サラ 作/ベンジー・デイヴィス 絵/しらいすみこ 訳/ひさかたチャイルド 刊>
◆『ワレワレはアマガエル』
<松橋利光 文・写真/アリス館 刊>
【中学年】
◆『ふみきりペンギン』
<おくはらゆめ 作・絵/あかね書房 刊>
◆『バラクラバ・ボーイ』
<ジェニー・ロブソン 作/もりうちすみこ 訳/黒須高嶺 絵/文研出版 刊>
◆『たった2℃で…地球の気温上昇がもたらす環境災害』
<キム・ファン 文/チョン・ジンギョン 絵/童心社 刊>
◆『ねえねえ、なに見てる?』
<ビクター・ベルモント 絵と文/金原瑞人 訳/河出書房新社 刊>
【高学年】
◆『ぼくの色、見つけた!』
<志津栄子 作/末山りん 絵/講談社 刊>
◆『森に帰らなかったカラス』
<ジーン・ウィリス 作/山﨑美紀 訳/徳間書店 刊>
◆『マナティーがいた夏』
<エヴァン・グリフィス 作/多賀谷正子 訳/ほるぷ出版 刊>
◆『とびたて!みんなのドラゴン:難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』
<オザワ部長 著/岩崎書店 刊>
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